復啓、時下愈 御清安奉賀候、貴著新造軍艦序文ノ儀ニ付キ、縷々ノ來旨仔細ニ敬承仕候、我ガ海國新神氣ノ發揮ニ相變ラズノ御盡力、誠ニ感服ノ至ニ御坐候、偖突然ナガラ別紙ハ是レ、故勝海舟翁ノ今ヲ距ルコト四十年、其軍艦奉行安房守タリシ當時、津ノ國神戸ノ豐蘆於テモノセラレシ長歌ニ候ガ、流石ニ達人ノ識見、我海國日本ノ國是ヲ述盡シテ餘蘊ナク、貴兄今回ノ述作ニハ、洵ニ得難キ好叙言タル文字ト相覺候、サレバ敢テ責メヲ遁ルヽ次第ニハ無之候ヘ共、今日尚自分ニ右以上ノ至言ヲ作リ得ムコトハ、到底覺束ナキコトニ候間、今回ノ貴著ニハ、何卒右ノ長歌ヲ以テ叙文ニ代ヘラムコトヲ深ク希望仕候、先著御求メニ對シ、貴酬迄如斯ニ候也。
十ニ月九日 肝 付 兼 行
押川方存殿硯所
左ノ蜂腰三首ハ、別紙ノ長歌ノ生誕地タル神戸ニ、今年觀艦式ヲ陪觀シテ詠シタルモノニ有之、序ナカラ一粲ニ博シ候也
海軍少將 從四位勳三等 肝 付 兼 行
海おほふ御艦の旗に國民の
あかき心のみゆる今日かな
大御艦おほしき霧の絶間より
朝日と見しは御旗なりけり
大八洲まもる御楯は國民の
和田津海めつる心にそある